理念

概要

日本には、歴史的都市として名高い場所だけでなく、全国津々浦々に文化財が存在しています。

たとえば、小さな町の集落の寺院に平安時代の仏像が祀られていることすら、さして珍しいことではありません。

そういった地域に根付いた、地域で管理してきている文化財を、ここでは「地域文化財」と呼びます。

地域文化財は、地域の歴史文化を示す貴重な存在ですが、地方の過疎高齢化などの諸問題によって、それらを将来にわたって管理していくのが非常に難しい状況にあります。

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地域文化財の現状と問題点

地方、特に過疎地域に所在する文化財についての問題点として、下記が挙げられます。

・地域の過疎高齢化 →お金と人手がない。

・文化財の専門家が周囲にあまりいない。

・文化財の意義や価値が不明になっている。

・文化財管理者と地域の人々の関心が低くなってしまっている。

これら諸問題の中でも「お金がない」ということは最大の問題といえ、損傷している文化財を修復したくとも、費用が捻出できないという問題がいたるところで生じています。

一般に、国宝・重要文化財や都道府県・市町村が指定する「指定文化財」といわれる文化財に限っては、修復費用の50~75%程度を国や自治体からの補助金によって賄うことができますが、指定文化財になっていないものについては適応されません。

また、地域文化財の中心をなす、仏像などの社寺に保管される文化財は、宗教(仏教や神道など)に関するものであり、自治体は政教分離の原則から修復費用に補助金を出すことができません。

こうした複合的要素から、地域文化財を修復・保護していくことは困難な状況にあります。

たとえば過疎地域の寺院を訪れた際には、虫喰いや風化によってこのままで近い将来に失われるのは明らか文化財を多く目にしますし、極端な場合には、単なる木片と一見区別がつかなくなった仏像の部材が、「お焚き上げ」されそうになることもあると聞きます。

何百年、場合によっては千年にわたって永く地域で受け継がれてきた文化財は、現在、一時に失われてしまうような危機的な状況にあるといえます。

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文化財の保護体制作り

地域に所在する文化財は、一度修復してしまえばその後は2度と壊れないというようなものではありません。

いったん修復しても、その後に文化財やそれが置かれる寺院などが適正に管理されていかなければ、結局その状態は悪くなってしまいます。

たとえば、ネズミや虫に喰われて穴が開いてしまったり、湿気が多くカビが生えてしまったりするようなことが起こると、極端な場合、修復した文化財も元の状態に戻ってしまいます。

そうならないためには、文化財管理者が文化財に常に関心を持って、保管場所の清掃や換気などを日常的に行うことが必要です。

文化財管理者がその文化財に関心を持つためには、その文化財を取り巻く地域の歴史文化を明らかにすることや、新たに拝観・鑑賞できるような機会を設けることなどが重要になってきます。

こうした積み重ねによって、文化財管理者だけでなく、地域の人々にも文化財への関心が波及し、またそうした関心を次世代に繋いでいくことも可能になってきます。

「文化財マネージメント」は、文化財を文化財管理者・地域の人々・地域外の協力者とともに保護する体制を構築し、同時に、文化財が再び地域のコアとなることで地域社会が保全されていくことを目指します。